信じる喜び?

週一度の地域の公民館での事務アルバイト中──

あるおばあさんが、ムートン調の四角い座布団を持って現れ、「これ、忘れてませんでしたか」って。これ、って、今持ってはるやん、とか思いながら訴えに耳を傾けてみると、どうやらそれと同じものを前日の集まりのときに座布団として持っていき、そのまま忘れて帰ったらしいのだ。集まりの主催者に問い合わせるも、部屋を片付けたときには見当たらなかった、と。

しかし、私にはそのムートン調の四角い座布団に既視感があった。朝、二階を見回ったとき、その日に限っていろいろな私物があちこちに置いてあったのだが、そのなかにそのようなものがあったような・・・

それで、すぐに二階へあがってみると、やはりトイレの前のごみケースの上に、そのムートン調の四角い座布団があった!

おばあさんはえらく喜んで、手に持ってるムートン調の四角い座布団を上下に揺らしながら、「これは特別なもんなんですわ。自分と主人とに買って。8000円するんです!」と。「これは特別なもんでね、電気が●△×……[意味不明]で、その、ありますわね、それで、特別なんですわ。8000円したんです」と。

どうやら、あまりにも特別な座布団なので、いつもそれに座るために、車の中、集まりの会場へ、と持ち歩いているようなのだ。その挙句、会場からの帰りにちょっとトイレへ行ったときに、トイレの手前にあったこぎれいなごみケースの上に置いたまま忘れてしまった、と、こういうことらしい。

よかったですねー、と喜びながら、そんなあこぎな商売がはびこってることに気持ちが塞がる気もしました。しかし、あのおばあさんの嬉しそうな顔。8000円の座布団が彼女にもたらす「希望」のようなものに、また驚きもしました。どう特別なのかはわかりませんが、あれだけ信じてありがたがっていれば、8000円の値打ちもあるといういもの?

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