日本について

ある勉強会で、テーマは香港の雨傘運動。講演者はそのとき部屋の隅っこの方で話を聞いていた私に目を合わせながら、「台湾に慰安婦記念館ができるという話も・・・」と。それは、私も当然慰安婦記念館設立に賛成で、ことの成り行きを注視しているに違いない、という視線だった。

私はその話には実は大して興味を持っておらず、最近ニュースになった、台湾が日本からの食料品輸入に規制をかけたという話と合わせて、台湾もだんだん中国の権力下に組み込まれつつあるな、ということを感じた程度だった。

慰安婦の問題は、もちろん痛ましいことである。しかし、そのことと、中国の圧力で台湾に慰安婦記念館を設立することとは、分けて考えるべきである。つまり、中国がどのような世界戦略を描いていて、そのためにどのようなことを現に行っていて、その計画を推進していくために「台湾慰安婦記念館」設立がどのような意味をもっているのか、ということである。

簡単に言うと、中国は勢力を拡大することを考えていて、それが南沙諸島の埋め立てや尖閣に対するプレッシャー、ヨーロッパまで鉄道敷設、さらにはアメリカまで鉄道を・・・という計画をひとつひとつ実行しようとしている。それはまた、香港にたいする中央支配を強化し、台湾を取り込み、尖閣のみならず沖縄の領有をも主張し・・・という一連の国土拡大計画でもある。

南沙諸島、尖閣、と太平洋側に向かっての動きは最近報道されているが、チベットやウイグルでやっている非人道的な行いに対しては国際社会も黙認しており、あまり報道されていない。報道されていないが、国土拡大の方法として、そのやり方が太平洋側に適用されないという保証は何もない。今のところ、太平洋側の動きがニュースになり、多少なりとも国際世論の圧力がかかっているのは、ひとえにアメリカの力とのバランスのおかげである。

そして、アメリカの力を支えているのが、日本という存在。

それで、中国は、日本に多方面からプレッシャーをかけ、日本が孤立することを画策している。

最近、中国との関係を深めた台湾が、そういった中国の一連の動きに呼応して、日本孤立化へと一歩、二歩とコマを動かしつつある、とったところだ。そのコマの一つが、慰安婦記念館設立ということ。

いいんですか?フェミニズムの正義から慰安婦記念館設立を歓迎してしまって。それは、繰り返すが、チベット弾圧、ウイグル弾圧などと地続きのできごとである。尖閣、沖縄収奪とつながっていく途上のものである。その動きに加担することに、どのような意味がありますか?

政治は難しい。政治的対立、というのはよしとしたい。そこから議論が始まる。どんな世界に私たちは住みたいと思うのか、そのためにはどうすればよいのか、議論すべきである。しかし、憂うべきは、今日本にあるのは政治的分断である。つまり、考え方や世界観の違う者同士が議論する土台がないということ。

「国というのは、ひとまず国境と国民がいて成立するものだと思うんだけど、これについてどう思う?」

と問いかけたら、みんなまじめに議論してくれるのだろうか? でも、そこから始めなくっちゃ、と思うのだ。

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